
こんにちは!中小企業診断士のマスミです。
今回は、中小企業診断士が顧問契約をするまでの過程とその内容についてのお話です。
私は現在、3社の顧問契約をさせていただいていますが、独立する前は、顧問契約ってどういう流れでするものなんだろう、、、となぞでしかありませんでした。



確かに。いきなり顧問契約を依頼されることってなさそう。
そうなんです。
なので、今回は、あくまで私の場合になりますが、どんないきさつで顧問契約をすることになったのか、顧問契約をするにあたって何が大切なのか、どんなことをしているかについてお話してみようと思います。
- 中小企業診断士が顧問契約に至るながれ
- 中小企業診断士が顧問契約をするために必要なこと
- 顧問として行っていること
パターン1:専門家派遣からの流れ
私が一番最初に顧問契約をさせていただいたのは、専門家派遣で知り合った事業者さんです。
診断士協会を通じて、支援機関から専門家派遣の依頼がきたのですが、事業計画を作る支援をしてほしいという内容でした。
全8回の訪問の中で、社長の話をお聞きして、事業計画を作成していきました。
その後、支援機関での訪問が終わるタイミングで、この後は個別に契約をして引き続き支援して欲しいと社長から言っていただいて、顧問契約することになったというわけです。
ちなみに、こういった診断士協会経由の支援機関からの依頼で仕事をしている中で、自分の売り込みをして顧問契約につなげるという行為は基本的にはNGです。
あくまで私たちは支援機関の依頼の元で支援を行うわけですので、自分の営業の場にしてしまってはいけません。
この時は、事業者さんから申し出があり、支援機関にも診断士協会にも了解を得ています。そのような場合はOKです。
では、専門家派遣で計画策定の支援をしているとき、いかに事業者さんに



マスミさんに顧問になって欲しいです!!
と言わせるかを考えていたのか、というと、全くそんなことはありません。
そもそも、当時の私は開業届を出したばかりの時だったので、自分が顧問になることなど全く考えておらず、



しっかり計画をつくらねば!!
としか考えていませんでした。
しかも、前年に他の診断士が数回訪問していた事業者さんで、他の人の話も聞いてみたいということで私に話がきたという経緯なので、こんな新米の私で大丈夫か?!と思っていました。
ですので、訪問までにできる準備は全部しておこうと考えました。
決算書は3期分いただいていたので、経営分析をして、業界比較をパワーポイントにまとめておきました。
建設業だったので、建設業の外部環境についても調べてまとめて、建設業の本は2冊読んで原価管理の仕方などを学び、建設業経理の本を買って、独特な仕分けについても勉強しました。
ただ、建設業経理については挫折しましたが(笑)
そんなこんなで訪問当日を迎えました。その時には事前資料を十数ページくらいは作っていて、状況に応じて出せばいいと思っていました。
どんな社長だろうと構えていましたが、にこやかで優しい方で、なんなら私が以前勤めていた会社(住宅設備メーカー)のことも好きですぐに打ち解けました。
お話を聞くと、考えていることはいろいろありますが、まとまっていないので資料に落とし込みたいというご要望で、前回担当した診断士の時は、それができなかったとのことでした。人の問題ではなく、使った制度がそういうものだったということです。
私は、「パワーポイントは友だち」くらいに資料作成が得意なので、そのご依頼であれば十分応えられるなと思いました。
初回訪問は、理念やこれまでの事業背景などをお聞きして、それらをまとめた資料と、全8回でいつ何をやるか大まかに内容を書いた資料を作成して、翌日には社長に送りました。
いつ何をやるかの資料は、作らなければならないというものではありませんが、私が社長の立場だったら、あらかじめ知っておいた方が準備ができるし、この支援のゴールが見えて安心できるだろうと思ったので作成しました。
この時のことを社長に聞くと、



え、こんなに資料作ってくれるの??!
と思ったとのことです。
喜んでいただけるし、信頼につながるので、回数が多い専門家派遣の時は作るといいと思います。
こんな流れで、ヒアリングをしてそれを資料にし、課題については対策を一緒に考えるなどして情報を整理していきました。
工事単価や受注する案件の方向性についても課題があったので、工事規模ごとの粗利から、どの工事を何件やれば固定費を賄えるかをシミュレーションする資料を作成しました。
すると、利益率の低い大型案件は今後減らしていこうとしていましたが、小さい工事の件数を増やしても、その粗利を稼ぐことはかなり厳しいと判明し、すぐに大型案件をやめてはいけないことが分かりました。
こんな風に、ヒアリングしながら、社長が気になっていることが出てきた時は時間をとって、問題を解消するための資料も入れていきました。
ちなみに、私は資料作成も得意ですが、数字の分析やシミュレーションをするのも好きなので、そういった点も生かせました。
独立する前の年に、事業DDや経営改善計画策定についてマスターコースで学んでいたので、その時の資料と近い感じで部門ごとに分析を行い、改善策についてもまとめていきました。
そんなこんなで、最後はかなりのボリュームの資料になりました。
そこで、社長がやりたいこと、現状の課題とその対策などが織り込まれた計画書ができたので、このままこれらを実行するために続けて支援して欲しいと言っていただいた、という流れです。



一生懸命やってよかったね
そうですね、社長には、



マスミさんは全然出し惜しみしないね。だから信頼できると思ったよ。
と言っていただきました。
本当に、ただただ依頼されたことに120%で応えようとしか考えていなかったので、嬉しかったですね。
パターン2:改善計画策定からの流れ
2社目は、先輩の会社で依頼をされた簡易計画策定を行った事業者さんです。
いきさつは色々あるので割愛しますが、私がひとりで収益力改善計画策定の支援をすることになったんですね。
収益力改善計画は、4~5枚程度の計画書なのですが、基本的には資金繰りが厳しくなってきた事業者さんが、返済を一時的に止めたり、止めないにしても事業計画をあらためて見直す必要がある場合に作成します。
計画書は4~5枚でいいとは言いましたが、それだけでは大したことが分からず、改善につなげるのは難しいと思っていたので、補足で必要な資料は作成していこうと思っていました。
社長の話を聞くと、自分でそういった計画書を作成できるようになりたいけれど、何をどうやればいいのか分からない、もっと会社の数字について把握したい、という思いを強く持っていることがわかりました。
今回の事業者さんは、部門が5つあり、収支を把握するのが難しかったので、図を書いて説明したり、部門別収支に共通固定費を按分する考え方をお伝えしたり、社長が知りたかった疑問をできるだけ解消しようとしていました。
すると、



そういうことか!周りの社長が言っていたことがやっと分かりました!
などと、言っていただきました。
社長にお伝えしている内容は、診断士の試験や管理会計の内容が多いのですが、実務が目の前にあるので、私たちが想像しながら勉強するよりも、かなり理解が早いです。
この時も、社長に説明したことは、後から見返せるように全て資料にしていったので、かなりのボリュームの補足資料ができあがりました。



もはや補足資料ではない
資料作成には3か月程度かかり、ここでいったん支援は終了となります。
完成したタイミングで、この先も支援が必要でしたらお手伝いできますよ、とお伝えしたら、お願いしたいとおっしゃっていただいたので、継続支援で顧問契約となったわけです。
(今回は最初から事業者さんと直接やりとりをしているので、継続支援の提案は問題ありません)
他の顧問先も、同じように計画策定のご支援をした事業者さんで、引き続き支援してほしいと言っていただいた流れです。
顧問契約で大切なこと
私がなぜ計画策定後に継続して支援して欲しいと言っていただけたかを考えたのですが、おそらく、社長が知りたかった疑問を解消したから、ではないかと思います。
私は、計画策定にあたって、計画書を作ることよりも会社が変わるきっかけとなれることを重視しています。
結果的に、変わるきっかけとなるような気付きがあると、計画書のアクションプランも書きやすいですし、根拠のある数値計画も作りやすいと感じています。
ですので、常にそのポイントがどのなのかを探りながらヒアリングをしています。
社長との会話で、ここの理解が足りないかも、というポイントが出てきたら、理解していただくまで説明します。その説明は計画策定には必要ないことですが、社長が知りたいのはそこなんですよね。
そうすると、



そういうことか!
なぜ今までそういうことを誰も教えてくれなかったんだ?
よく今までやってこれたな、、、
という反応をされる方が多いです。
この時が一番嬉しいです。今回の仕事を担当した意義があったなと感じます。
ですので、私の場合はですが、社長がどんなことを知りたくて、どんな支援を望んでいるのかにアンテナを張り、そのニーズを満たすこと、損得勘定なく本当に会社のためになることを惜しみなくやることが、結果的に顧問契約につながるのではないかと思っています。
顧問の仕事
私の場合は、計画策定をした後の継続支援なので、計画書の進捗確認がベースになります。
とはいえ、日々の業務の中で社長の悩みや課題はたくさん出てきますので、その都度お話を聞いて、解決策について提案を行っています。
元々資金繰りが一番の課題だった事業者さんは、だいぶ改善したので、今度は組織について課題を感じているとのことで、今は人事制度のアドバイスを行っています。
新規の取引の収益性について相談があれば、その都度収支予測を一緒にしますし、ブランディングが必要となれば全体設計を一緒にやっていきます。チラシの作成の仕方が分からなければ、デザインのアドバイスもします。(昨年デザインスクールで10か月勉強したことはここで生かせています。)
課題に応じて弁護士や保険屋さんを紹介したこともあります。(紹介の報酬はいただいていません)



診断士の1次試験の「経営法務」で弁護士を紹介する問題がありましたね~
そんなこんなで、何でもやります。
勉強しなければならないことがたくさんですね。
でも、目の前に事業者さんがいて課題があるので、勉強する目的は明確ですし、勉強しがいがめちゃくちゃあります。
顧問として必要なこと
顧問となってからは、幅広い知識と能力が必要だなと感じています。
私は30人未満の事業者さんが多いので、特にそう感じます。
規模が大きくなると、細分化されて特定の分野の専門家が必要な場合もあると思いますが、小規模な事業者さんの場合は、ひとつひとつの専門性は高くなくてもいいから、いろんな分野をカバーできる方が重宝されると思います。
私の場合は、事業DDや経営改善計画書の策定支援の他、原価計算や価格設定、採用、人事評価制度、マーケティング、ブランディング、HP作成、インテリアやデザインの知識もあるのでこの辺りも支援ができます。
今後は業務効率のためのITツール導入支援ができるよう勉強して幅を広げつつ、コーチングベースの組織づくりや金融支援について勉強して、今行っている支援の掘り下げもしていこうと思っています。



T型人材だね
顧問の仕事は、自分が学んだ知識やスキルがそのまま生かせるので、すごく楽しいですし、やりがいがあります。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
あくまで私の場合ですが、顧問契約に至った経緯とその理由、仕事内容についてお伝えしてみました。
きっと他の人はまた全然違った流れで、違ったことをしているとは思います。
顧問の契約料は、従業員の人数によってある程度決めています。私の場合は、改善計画からの流れが多く、それほど資金に余裕ある事業者さんではないので、診断士の相場よりは安くしています。
私が儲かることが最優先ではないので、それでいいと思っています。会社が変わっていく場面に立ち会えることが一番見たくて、そこに自分が関われることが嬉しいです。



めちゃくちゃいい人!!!



そうなんです。めちゃくちゃいい人なんです。
不思議ですが、会社にいた頃は会社のグチばかり言っていた私ですが(本当にすみません)、診断士になって、自分が意義があると思うことだけに時間を使えるようになってきたらストレスがなくなり、毒が抜けていい人しか残っていないんです笑



気が強い、怖そうとか散々言われてたのにね!
もちろん、きついこともあるし嫌なことも多少ありますが、基本的に仕事は楽しいですし、個性豊かな社長とも楽しくお付き合いさせていただいています。さまざまな出会いやきっかけに感謝の毎日です。
ということで、最後は私がいい人という話になりましたが(笑)、今回の記事が誰かの何かの参考になれば嬉しいです。



ではまた!