
どうもどうも、中小企業診断士のマスミです。
今回は経営改善計画策定支援(405事業)についてできるだけ分かりやすくお伝えしていこうと思います。



そもそも経営改善計画って何ですか?
そうですね。では、経営改善計画とは何かから説明していきますね。さっそくいってみよう!
- 経営改善計画書とは
- 経営改善計画策定支援とは
- 経営改善計画策定の詳細、流れ
経営改善計画(書)とは
「経営改善計画(書)」とは何かということですが、日本政策金融公庫の「経営改善計画書策定の手引」には次のように記載されています。
「経営改善計画書」は、将来の数年間(5年程度)における予想損益計算書です(予想貸借対照表を作成することもあります。)。
具体的には、今後何をどのくらい売って、どの程度儲けるか予想することです。
出典:日本政策金融公庫「経営改善計画書策定の手引」https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/keieikaizentebiki_230403n.pdf
現状をふまえて、将来の見通しを立てるための計画書です。
それを作成することによって、事業者さんには次のメリットがあります。
- 経営改善に向けた取組みを金融機関等に示して、金融支援が受けやすくなる
- 自社が進むべき方向性が明確になり、収益改善ができる
- 外部専門家の支援を受けることで、自己流の経営を見直すきっかけになり、経営判断がしやすくなる
①にある通り、計画を作るとことで金融支援が受けやすくなります。
金融支援とは、一時的に返済を止めたり、返済の条件を変えて返せるだけの金額を返すようにしたり、借り換えをして月々の返済額を減らしたりなど、金融機関になんらかの協力をしてもらうことです。
資金繰りが厳しくなり、金融機関への返済が厳しい、借入が難しいなどの状況の事業者さんが金融支援を受けるために作成することが多いです。
もちろん、金融支援を受ける目的だけでなく、自社の経営を見直して収益改善を行っていく内容であることが重要です。



なるほど!今資金繰りが厳しいので作りたいです。
計画書については何となく分かりましたが、どんなものを作るんですか?私にできますかね…
まあ、そうなりますよね。ですので、専門家の支援を受けて作るのが一般的です。
その専門家に依頼するためにかかる費用の2/3を国が補助してくれる制度があります。これを『経営改善計画策定支援(通称405事業)』と呼んでいます。



なるほど、それはありがたいです。405事業と呼ぶのはなぜですか?
405事業と呼んでいるのは、当初の予算が405億円だったためと言われています。
経営改善計画策定支援(405事業)概要



「経営改善計画策定支援」については、中小企業庁のホームページに以下のように載っています。
「国が認定した専門家の支援を受け、金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定する場合、経営改善計画策定に必要となる費用の2/3を国が補助します。」
出典:中小企業庁ウェブサイト(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/05.html)
国の補助金を使うことになるので、制度を使える事業者さんの条件や、作成する資料の内容にも条件があります。それに沿った計画を作る必要がありますし、申請に関わる手続きも色々あります。



はい!質問です!支援してくれる専門家ってどんな人ですか?
この制度を使った支援ができる専門家とは「認定経営革新等支援機関」(以降「認定支援機関」)に登録している専門家です。
私のような中小企業診断士や税理士さん、社労士さんが個人で登録していたり、コンサルタント会社や金融機関、商工会、商工会議所等も認定支援機関として登録しています。
経営改善計画策定支援の制度を使って計画を作りたい事業者さんは、検索システムで近くの支援機関を探して依頼することができます。
メインバンクに相談すれば紹介もしてくれると思います。
制度が使える対象者
支援制度が使える事業者さんは、中小企業・小規模事業者、個人事業主です。
医療法人(「常時使用する従業員が 300 人以下」に限る)」と農業や漁業など 1 次産業の事業を行っている事業者さんも、中小企業に該当する場合は対象となります。
社会福祉法人、特定非営利活動法人、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、農事組合法人、農業協同組合、生活協同組合、LLP(有限責任事業組合)及び学校法人は対象外です。
経営改善計画の内容
作成する計画書の内容は、こちらにサンプルが載っています。
もう少し詳しく説明しますと、以下の内容が必要です。
以下の計画策定の着眼点に沿った支援を検討
1.収益力改善支援
・現状分析(会社基本情報・財務・商流・業務プロセス・外部・内部環境)
・経営課題の明確化
・課題解決策の検討
・アクションプランの策定
・数値計画策定
・資金繰りの検討
・金融支援内容の検討2.ガバナンス体制の整備支援
・現状把握(経営の透明性、資産等の分別管理、内部管理体制)
・課題明確化
・対応策の検討と事業者へのアドバイス上記の着眼点を踏まえて策定する計画等
・会社概要表(株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等)
・ビジネスモデル俯瞰図(グループ企業等がある場合は企業集団の状況を含む)
・経営課題の内容と解決に向けた基本方針
・アクションプラン(各経営課題の解決のための具体的な行動計画。及び伴走支援計画(計画内容に応じた期間(原則3年程度))
・貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の計数計画
・資金繰表(実績・計画)
・金融支援の依頼内容(条件変更、融資行為等)
・資産保全表
・その他必要とする書類出典:中小企業庁「経営改善計画策定支援に関する手引き」
(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/download/05/04_01.pdf)



これは自分だけでは作れませんね~



大丈夫ですよ。そのための支援制度、専門家ですから。
一緒に作っていきましょう。
計画書は社長の名前で作成しますが、資料作成自体は認定支援機関の専門家が社長にヒアリングをしながら作成するのが一般的です。もちろん、社長に確認しながら、実態に則し実行可能な計画にします。
支援内容
認定支援機関が行う支援とは、次の通りです。
- DD・計画策定支援
-
- 現状を分析し課題を明確化し対応策を検討する
- 今後の計画と実現に向けたアクションプランの検討
- 金融支援を受けて資金繰りの安定を図る
- 伴走支援
-
- 計画内容に応じた期間、認定支援機関等による伴走支援を実施
出典:中小企業庁ホームページ(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/05.html)
DDというのは、デューデリジェンスの略です。デューデリジェンスとは会社の状況を分析することです。
DDでは、決算書を元にこれまでの経緯や現状の財務状況をまとめたり、会社の良いところと課題を整理したり、置かれている環境をまとめたりします。
それを元に、でてきた課題解決のための実施事項を検討して、今後の収支について見込みを立てて、どんな金融支援を受けるか検討し、それらを金融機関に伝わるように資料を作成するということを行います。
伴走支援は、計画を作った後3年間は定期的に訪問して計画の進捗を確認したり、その都度打ち合わせをして軌道修正のアドバイスなどをしたりします。



おお!それは心強い!
費用の目安と補助金額
経営改善計画策定支援で国が補助してくれる金額は次の通りです。
通常枠の場合(※1)
補助対象経費 | 補助率 |
---|---|
① DD・計画策定支援費用 | 2/3(上限200万円) |
② 伴走支援費用(モニタリング費用) | 2/3(上限100万円) |
③ 金融機関交渉費用※2 | 2/3(上限10万円) |
※1:通常枠の他に「中小版GL枠」がありますが、こちらはより本格的な事業再生や廃業の支援であり、DDと計画で別の資料作成が必要になります。補助経費もそれぞれ別に設定されています。
※2:③金融機関交渉は経営者保証を外すことを目指す時のみ対象です。
それぞれ総額は依頼する認定支援機関によって変わりますが、事業規模による目安は次のように定められています。
中小企業区分 | 企業規模 | 総額の目安 (伴走支援を含む) | 費用負担の上限金額 (総額の2/3以内) |
---|---|---|---|
小規模 | 売上 1 億円未満かつ 金融機関への借入金が 1 億円未満 | 150 万円以下 (伴走支援は総額の 1/2 以下) | 合計 100 万円以下 ・伴走支援費用は 1/2 以内 |
中規模 | 売上 10 億円未満かつ 金融機関への借入金が 10 億円未満(小規模を除く) | 300 万円以下 (伴走支援は総額の 1/2 以下) | 合計 200 万円以下 ・伴走支援費用は 1/2 以内 |
中堅規模 | 売上 10 億円以上または 金融機関への借入金が 10 億円以上 | 450 万円以下 (伴走支援は総額の 1/2 以下) | 合計 300 万円以下 ・計画策定支援費用 200 万円以下 ・伴走支援費用は 1/2 以内かつ100 万円以下 |
費用については、最初に支援機関で見積りを作成します。業務内容1時間あたりの金額を設定し、かかる時間に応じた金額とするように決められています。
事業者さんが最初に負担するのは、計画策定着手時に①の金額の1/3です。伴走支援は計画策定が終わった後、その都度支払いです。
国の補助金額は立替をする必要はなく、国から支援機関に直接支払われます。



立替しなくていいのは助かります
例えば、①の計画策定が100万円、②の伴走支援が50万円、総額で150万円だった場合は最初の支払いは33万円くらいです。
総額が300万円だった場合は、①が200万円、②が100万円とすると、最初の費用は66万円ですね。
また、金融機関の借入が信用保証協会の保証制度を使っていて、計画を策定した後に金融機関を集めて説明を行う経営サポート会議を行う場合は、保証協会から計画策定にかかった費用のうち、数十万円の補助を受けることができます。(一度支払った後で振り込まれます)
保証協会の補助の金額は、各県の保証協会の制度によって変わりますので、支援機関に確認してみてください。



おお!そんな制度もあるんですか!
これらの補助金申請の手続きは支援機関が行ってくれますので、社長があれこれ申請書を書く必要はありません。
ただ、申請には押印が必要なものや提出する書類がいくつもあります。その時々で指示されたものを提出してくださいね。



必要書類とその内容については、別の記事で詳しく紹介します!
経営改善計画策定の流れ
では、経営改善計画策定の流れと期間の目安についてみていきましょう。
担当する認定支援機関ごとに流れは違うかもしれませんので、大まかにこんな流れという程度に参考にしてください。
まずは、経営改善計画策定支援制度を活用し、計画策定や金融支援を受けたい意向をメインバンクに伝えます。
もしくは、「中小企業活性化協議会」に相談でも良いです。
中小企業活性化協議会(以降活性化協議会)は、中小企業の経営改善等の支援をする公的機関です。相談窓口はこちらをご覧ください。
活性化協議会に相談すると、「経営改善計画策定支援」以外にも状況に合わせて様々な支援方法を提案してくれますので、資金繰りで悩んだら、まず相談してみると良いです。
いずれにしても、メインバンクの協力が必要になります。
メインバンクに相談して、経営改善計画策定支援制度を使って計画を立てましょう、となったら、認定支援機関の専門家と面談することになります。
認定支援機関は、メインバンクが紹介してくれることが多いですが、自分で探してお願いするということもできます。
認定支援機関が決まったら、メインバンクと3者で面談することが一般的です。
ここでは、経営改善計画の説明やスケジュール、費用、必要書類などの説明を受け、簡単に現状の確認を行います。
この後に支援制度を使うための利用申請を行うので、そこで必要となる書類を事前に用意しておいてくださいと言われることが多いです。
具体的には、以下の書類です。
- 申告書直近3期分(決算書、科目明細書、法人税・県民税・市民税申告書、消費税確定申告書、これら一式)
- 履歴事項全部事項証明書(6か月以内に取得したもの)の原本
また、金融機関の借入残高と信用保証協会の保証がついている借入がそのうちどれくらいかを記載する必要があるので、その内訳を確認します。
メインバンクが情報を持っている場合は、メインバンクから支援機関へ渡してくれたりします。
その他に、今後DDと計画策定を行うにあたり必要となる書類がたくさんありますが、まずは上記2点つが最初に必要です。
書類については別の記事で詳しくお伝えしますので、少しお待ちください。
利用申請は、支援機関が「中小企業活性化協議会」に行います。
支援機関が、利用申請書、申請者概要、見積書、作業工程表などを作成し、用意していただいた申告書3期分と履歴事項全部証明書を加えて申請します。
利用申請書は、事業者さん、メインバンク、支援機関3社の押印が必要なので、郵送したり持参したりして全ての押印が揃ってから申請します。
ここまで、書類を揃えて、押印して…とやるので面談してから1か月程度かかることもあります。



郵送していると時間がかかりますね…



そうなんですよ。今のところ申請書の提出はデータでやりとりできないんですね。
※窓口になっている活性化協議会ごとに対応が違うかもしれませんのでご確認ください。
利用申請が済むと、申請の受理通知が届きます。
そこから計画策定スタートとなりますが、支援機関と契約を結ぶことになりますので、支援機関が作成した契約書に収入印紙を貼り、押印して1部ずつ保管します。
同じ頃に計画策定費用の1/3をお支払いいただきます。(計画の部分だけの費用です)
その後は支援機関と面談し、計画書を作成していきます。
支援機関によって流れはまちまちかと思いますが、基本的には事業者さんには、聞かれたことに答えたり、必要なデータを提供したり、実施したいことなどをお話しいただきます。
面談回数は、これは本当に支援機関の担当者と事業者さんの状況によると思います。
短時間で回数を重ねる場合もありますし、1日にまとめて時間をとって日数は少ない場合もありますし、また、事業者さんの方でどれだけデータがまとまっているかによっても面談回数や頻度は変わります。
期間としては、現状分析で3か月、数値計画策定で3か月、合計6か月程度くらいでしょうか。
計画書が完成したら、金融機関に連絡して、計画内容の確認をしてもらいます。
そこで金融機関からの要望等を確認して、修正があれば行います。
次に金融機関を集めた説明(バンクミーティング)を行うことが多いので、事前に内容を見ておいてもらいます。
作成した計画について、金融機関に説明を行います。
銀行等が行う時はバンクミーティング、保証協会が行う場合は経営サポート会議と呼んでいます。
保証協会の保証制度を使ってる比率が大きい場合は、保証協会が主導で金融機関を集めて説明の場をセッティングしてくれます。
経営サポート会議を行うと、保証協会の補助制度(計画策定支援にかかった費用の一部補助)が活用できます。
基本的には支援機関が全体を説明するので、社長には質問に答えていただく程度です。
計画の内容に対し、金融機関が合意すると、合意書を発行してくれます。全ての金融機関の合意が得られれば計画合意となります。
ここまで、利用申請から6か月~8か月程度くらいが目安でしょうか。
合意が完了すると、計画に沿った金融支援が受けられます。
具体的には返済を据え置きしたり、返済額を減らしたり、借換で一本化して返済期間を延ばしたりなどです。
合意後は計画策定支援の費用、国が補助する2/3について必要書類を提出する手続きがあります。
手続きは支援機関が行うので、押印などの依頼に対応してください。
また、保証協会の補助が使える場合は、保証協会から連絡があり、手続き後に補助分が振り込まれます。
ここまでで支援機関と密にやりとりするのは一旦終了です。
計画合意から半年程度先に伴走支援が始まることが多いです。
計画合意のタイミングによって、伴走支援の時期が決まりますが、その時期になったら支援機関から連絡がきますので、日程調整をして面談を行います。
伴走支援の期間は3年間です。定期的に面談を行うことになります。
伴走支援の後は、その都度費用の支払い(伴走支援費用の1/3)があります。また、国の補助を受けるための書類を活性化協議会に提出する必要があります。
こちらも支援機関が手続きを行いますので、押印など協力をお願いします。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
「経営改善計画策定支援(405事業)」の利用と支援内容について説明してきました。
国の支援制度、補助金を使うので色々と手続きがありますが、資金繰り改善や金融支援を受けるためにとてもメリットが大きい支援制度だと思います。
また、せっかくお金を払って依頼して計画を作るので、単に金融支援を受けるためだけのものではなく、改めて自社の事業を見直す機会にしていただければと思います。
専門家と一緒にじっくりと現状と向き合い、具体的で実行可能なプランを立てる場として活用してください。
普段なんとなくでやっていた価格設定や営業方針など、これでいいのかな~と思っていることがあれば、相談してみてください。現状分析や数値を元にした考え方をお伝えできると思います。



次回、必要書類とその使い道、計画の中身について詳しく説明したいと思います。ではまた!