どうもどうも。中小企業診断士のマスミです。ようこそ。
このサイトはコンサルタントの国家資格、中小企業診断士である私が、経営に関する知識をゆるキャラと共に分かりやすくお伝えしているブログです。
ここでは自己紹介の一環として、日々の出来事や気付きを日記としてまとめています。企業内診断士であった私が独立するにあたってどんなことを考えて何をしてきたか、独立後は何をしているのかを書いています。
先日私は、「認定経営革新等支援機関」(以下「認定支援機関」)をになるための実力判定試験に合格しましたので、その内容や制度についてお伝えしようと思います。
というのも、制度や申請方法についてはある程度書かれていますが、じゃあどうやってなるんだ?ということがものすごーーーーく分かりにくいと思うのです。
え?何度調べても自分がどこに当てはまるのか分からない・・・
↑こうなります。
検索すると、いろいろな記事が出てきますが、それもなんだかまちまちで実際どうなのかが不明なんですね。
ということで、私が調べたサイトと実体験+認定支援機関になっている友人の話もふまえてお伝えしていきます。
- 経営革新等認定支援機関とは何なのか
- 診断士が経営革新等認定支援機関になる方法
- 研修の種類と内容、試験内容
経営革新等認定支援機関とは
「認定経営革新等支援機関」は、一般的に「認定支援機関」と呼ばれていますが、どちらも同じものを指しています。
元になっている法律は「中小企業経営力強化支援法」です。
目的は次のように記載されていて、専門的な知識を持ち、実務経験のある人を中小企業の支援ができる専門家として認定しますよ、ということです。
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、 中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。
経済産業省ホームページ(https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/chushokigyo/nintei_shienkikan/nintei_shienkikan.html)
中小企業は認定支援機関に相談して、経営計画を策定することなどで様々な優遇措置が受けられます。
事業者さん向けのチラシはこちらです。
国の狙いとしては、日本の経済を支える中小企業に対して、事業の継続と発展をして欲しいと思っていて、そのためにはしっかり事業計画を立てる必要があるので、専門家に相談して作りましょうね、という意図があります。
認定支援機関に相談して事業計画を作成することで補助金の申請ができたり、税制優遇の申請ができたりします。
事業再構築補助金や経営改善計画策定支援事業では認定支援機関の支援が必須です。
詳しくは次の「国の補助事業等において必要とされる認定支援機関(経営革新等支援機関)の役割について」に記載されていますのでご確認ください。
また、ミラサポPlusにも「こんな時は認定支援機関へご相談ください」と紹介されていますが、こちらは相談をおすすめしている内容であって、必ずしも認定支援機関の支援が必須ではないものも含まれています。同じ補助金でも「ものづくり補助金」は必須ではないですね。(ただ、事業者さんが自力で申請書を書くのはなかなか難しいとは思いますが。)
ということで、事業者さんは認定支援機関に相談して支援してもらうことで様々なメリットがあります。
認定支援機関は『認定支援機関検索システム』から検索できるようになっています。認定支援機関になるとここに掲載されるということですね。
支援する側の診断士としては、信用度、信頼度がアップしたり、対応できる仕事が増えることになるので、取得するメリットあると思います。
認定支援機関になる方法
では、認定支援機関になる方法を経産省のホームページで確認していきましょう。
『経営革新等支援機関の新規申請について』を見ましょう。
「認定支援機関 申請」「認定支援機関 なりかた」などで検索すると出てきます。
「認定支援機関」だけだとこのページは一生探せないよ。
ここには申請までの流れや必要事項が書かれています。
必要な書類は『新規・更新申請に係る添付書類一覧』で確認します。
- いつでも申請OKではなく、受付期間と認定日が決まっている
- オンライン申請が必須のため、GビズIDプライムの取得が必要
- 申請に必要な書類一覧(診断士は登録証と決算書があればOK)
診断士の場合は青色申告決算書(PL)3期分と資格の登録書が必要です。後述しますが決算書は1期分でも大丈夫です。
認定基準
次に認定支援になるための基準を確認します。同じページのここ(以下の黄色い枠)を見ましょう。Q&Aなどにも認定基準が記載されていますが、めちゃくちゃ分かりにくいです。このフローチャートに辿り着かないと判断するのが相当困難です。
次のようなフローチャートがでてきます。
順番にみていきます。まず中小企業診断士は要件①を満たすので要件②に進みます。
次に要件②ですが、3年の実務経験があるか問われます。3年あればYES、なければNOに進みます。
私の場合は3年未満なのでNOです。その場合、実践研修を受講し、試験に合格する必要があります。
3年以上の経験があるYESの場合はさらにそのうち1年以上経営革新等の支援経験の有無が問われ、経験があれば事業所得の要件に進みます。なければ実践研修の要件が必要になります。
1年以上の支援経験に該当する業務は経営革新計画策定等に係る業務と書かれていますが、明確に決まった業務は指定されていないようです。これらの業務に関わった期間が通算1年あれば良いとされています。
要件③では事業所得の要件ですが、3期分の所得が黒字であれば要件を満たし、該当しなければ、1期分の事業所得と収支予測があれば要件を満たすことになります。
そのため、事業所得が1期分ないと認定されないということですね。「事業所得」なので一般的には開業届を出して、継続的に収入があるような状態です。
ということで、診断士に合格して3年未満の人で1年以上経営革新計画策定などの業務を行っていない場合は、まずは実践研修を受ける必要があります。
実践研修とは
次に実践研修についてです。
実践研修は、中小機構に案内があります。ここからは経産省のホームページではなくなるんですね。
分かりにくい・・
『中小機構>支援機関の方へ>研修・セミナー』を見ましょう。
認定支援機関に関わる研修が2つ見つかります。
「中小企業経営改善計画策定支援研修(理論研修)」と「中小企業経営改善計画策定支援研修(実践研修)」の2つですね。
先ほどのチャートで中小企業診断士は「実践研修」を受けて試験に合格する必要があると記載されていましたので、「理論研修」は受けなくても認定支援機関の要件は満たせます。
理論研修の対象者に「中小企業診断士」と記載があるので迷うかもしれませんが、認定支援機関になるための条件としては必須ではないということです。
理論研修は、先ほどのフローチャートの資格要件①を満たさない行政書士さんや一般のコンサルタント会社の方で、実務要件も満たさない人は受講する必要があります。診断士も認定の要件になっていはいませんが受講することはできます。
実際に実践研修で一緒だった方は、診断士の業務をあまり行っていなかったので理論研修から受講していました。
確かに、実務をあまり行っていなくていきなり実践研修だと厳しいかもしれません。
(理論研修は費用は10万くらいかかり、全4回で17日間なので相当大変そうですが。。)
とっておきの方法をお伝えします。
『経営支援アドバイザー2級』という試験のテキストが予習になります。この資格自体、銀行員さんの実力判定試験になっていて、金融機関の中小企業支援に関わる知識が問われる試験です。
金融機関の業務があまり分からない人にはとても勉強になりますし、実践研修のベースとなる知識もかなりカバーできます。中小企業政策(制度の説明)の部分はあまり必要ないので、再生支援の手順や考え方などを中心に勉強すると良いと思います。
私は営業出身で金融機関のことが分からなかったので、ものすごく理解が深まりました。試験は年に1回なのですが、テキストを読むだけでも勉強になるので私のような人にはおすすめです。
実践研修の申し込み
実践研修は次の中小企業大学校で行います。
- 東京校
- 旭川校
- 仙台校
- 瀬戸校
- 関西校
- 直方校
詳しくは先ほどのホームページをご確認ください。
申込みは会場ごとに受付しますが、受付できる方法が違うので注意しましょう。仙台校はFAXですし、瀬戸校は郵送のみです。
FAX・・・
そして東京校は1秒を争う激戦です。東京校の場合は朝9時にメールで申し込み書を送るという方法です。私はメールの予約設定で9時に送付するようにしていましたが、それでもキャンセル待ち2人目になりました。幸いキャンセルが出て受講できることになりましたが。
研修は2日間で、受講にあたっては通学と宿泊が選べます。受講料は26,000円、中小企業大学校の寮に宿泊するは1泊2,700円が別途かかります。
私は通学できなくはなかったですが、早起きするのが嫌なので前日と1日目の2泊しました。1日目を終えてみて、宿泊にしておいて良かったと思いました。研修が終わった後へとへとで帰るのがしんどいです。また翌日来るのもしんどいです。
実践研修の内容
実践研修は「経営改善計画」の策定を実践する研修です。「経営改善計画」とは、単に経営を改善するための計画ということではなく、国が行っている支援事業の名称です。中小企業活性化協議会が窓口です。
経営改善計画策定事業は一般的に405事業と呼ばれていますが、名前の由来は当初の予算が405億円だったからのようです。
事業の内容は次のように書かれています。
本事業は、金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組みを促すものです。
中小企業庁:経営改善計画策定支援事業
中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に必要となる費用の2/3(上限額は以下参照)を中小企業活性化協議会が負担します。
つまり、405事業は金融支援が必要なくらい経営改善が必要になった事業者さんの事業計画の作成を支援するということです。それらに係る費用の2/3は国が負担してくれます。
金融支援というのは、返済を止めたり、遅らせたり、返済額を減らしたりなど、何かしら金融機関に協力が必要ということですので、対象となるのは経営状態が良くない会社ですね。
実践研修は、そのような会社の事業デューデリジェンス(事業の状態を分析すること:事業DD)をして、事業を立て直すための方策を考え、収益計画を立てるという研修です。金融機関が納得する計画を立てる必要があります。
2日間の研修で、事例企業1社の改善計画を策定します。1班5人くらいで与件文を元にグループワークでビジネスモデル俯瞰図の作成などを行い、後半は個人でひたすら見込みを作っていくような流れです。
中小企業活性化協議会では様々な経営改善の支援を行っています。中小企業庁のHPでは中小企業活性化協議会は次のように書かれています。
中小企業の活性化を支援する「公的機関」として47都道府県に設置されており、全国の商工会議所等が運営しています。 中小企業活性化協議会が地域のハブとなり、金融機関、民間専門家、各種支援機関と連携し、「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求します。
収益性のある事業を有しているが、財務上の問題を抱えている中小企業者の再生を支援するため、2003年に中小企業再生支援協議会が創設され、長期にわたり中小企業者を支援してきましたが、2022年3月4日に「中小企業活性化パッケージ」が公表され、中小企業再生支援協議会は、経営改善支援センターと統合し、「中小企業活性化協議会」が設置されました。
中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html)
この中小企業活性化協議会の支援の中でメインとなっているのが上記の「経営改善計画策定支援(405事業)」と「再生支援」です。どちらも計画策定等の費用を再生支援協議会が2/3補助してくれます。
この2つ、いずれも経営状態が良くない事業者さんの支援ですが、ホームページを見ても違いがよく分からないかと思うので、以下にまとめます。
細かい違いはいろいろあるのですが、ざっくりこんな感じで認識していればよいかと思います。
経営改善計画策定支援(405事業) | 再生支援 |
---|---|
・診断士は認定支援機関として、事業DD+改善計画の作成をする(簡易の財務DDを行い実態BSを作成) | ・認定支援機関(診断士など)と一緒に事業者さんが計画を作成するという体裁。計画書の名前は事業者さんになる。・活性化協議会主導で行う。 ・診断士は協議会から依頼されて事業DDを行い報告書を作成する。外部の専門家として診断士の名前で作成する。 ・事業DDを元に経営改善計画も作成するが、こちらは事業者さんが作成する(という体裁)。 ・財務DDは公認会計士や税理士が行う。 ・405事業よりも経営状況が悪化していたり、事業規模が大きい場合が多い |
ちなみに、私が1年通っている「経コン塾(経営コンサルタント養成塾)」は再生支援の事業DDを主に勉強するプロコン塾です。
どんな内容か気になる方はこちらをご覧ください。
経コン塾で勉強していたので、実践研修でいきなり経営改善計画策定を行っても問題なくできましたが、勉強していなかったら
これは何をやっているんだ?
り、りすけ?さすけ?
となっていたと思われます。
補助金申請などで環境分析、収支計画作成を行っている人はおそらくなんとかなると思いますが、私の場合は補助金申請もほとんど行っておらず、診断士試験で決算書の見方を理解したようなレベル感だったので、プロコン塾でそのあたりをカバーできていなかったら理解するのが難しかったと思いました。
とにかくBS、PL、キャッシュフロー計算書がいっぱいでてきて、Excelに数字を入れて赤字を解消するように計画を作っていきます。もちろん問題を特定して解決策も考えます。
実力判定試験
2日間の研修が終わると実力判定試験を受けられます。2日目に丸一日数字と格闘した後、17時半から19時までなので、疲労が半端ないです。2次試験の事例Ⅳを思い出しました。
試験の問題は、大まかには2日間の研修で習った内容ですが、金融機関の知識や一般的な決算書の分析の問題もあります。
NPVの問題はない(おそらく)ので診断士の2次試験よりは難易度は高くは無いと思いますが、かなりボリュームがあるので、考え込む時間はほとんどなく、どんどん手を動かしてようやく時間内に終わった、という感じでした。
結果は、試験から約3週間後くらいに郵送されてきます。
合格点は公表されていなく、自分の点数も分からないですが、解き方が全く分からない問題はあまり無かったので、多少ミスをしても7割くらいは取れているかなという感覚でした。無事合格していたのでほっとしました。
知り合いの診断士で不合格だったという人は聞いたことが無いので、ほとんど合格すると思っていましたが、意外とそうでもないという話も聞いたので、実際のところ合格率は全く分かりません。
さいごに
中小企業診断士が認定支援機関になる方法、流れについてお伝えしました。
経産省やミラサポplus、中小機構と色々なところに情報が分かれていてとても分かりにくいと思ったのでまとめてみました。それぞれリンクから情報を確認できるようにしていますので、不明点があったら各HPを確認して問い合わせてみてください。
私はひとまず実力判定試験には合格しましたが、まだ事業所得が1期分ないので、1期過ぎたら申請をしようと思っています。
その後(2024年4月追記)
2023年12月で開業して1期目を終えたので、認定支援機関の申請をしました。
認定経営革新等支援機関電子申請システムから行えます。申請はマニュアルがあるので、こちらを見ればだいたい分かります。
一部分かりにくいところがあったりしますが、間違っていると、メールで修正するように連絡がきますので、指摘があったところは直して再申請できます。
(私も間違ったので連絡がきました(笑))
2月末に申請して、ほぼ2か月後の4月末に認定されたとメールが来ました。
ちなみに、認定支援機関として5年ごとに更新が必要となりますので、ご注意ください。
ということで、2023年2月に実践研修を受け、約1年2か月後にようやく認定支援機関として登録となりました。
(完)
では、また!
会社を辞める前から現在までの経緯、やってきたことについてはこちらで詳しく書いていますので、よかったら参考にどうぞ。
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