こんにちは!中小企業診断士のマスミです。
今日は、自社のマーケティングを考える上で一番重要なことを整理して考えられるようになるためのお話です。
マーケティングの考え方について、なんとなく分かったけど、
で、どうすればいいの?
となった方に、フレームワークや質問を元に「誰に」「何を」「どうやって伝えるか」を順番に考えていきましょう。
ひとりで考えられないので助かります!
マーケティングとは?全体像や流れなど基本的なことはこちらを読んでみてください!
- 自社の強み
- 自社がターゲットとすべきお客様
- 自社の強みを伝える方法
マーケティングとは
まず基本的なところから確認しますね。
「マーケティング」とは、色々な言い方や説明がありますが、ここでは、以下のように定義します。
- お客様が価値を感じる独自性のある商品やサービスを生み出すこと
- その商品やサービスを必要とするお客様に届けるしくみを作ること
- 商品やサービスが売れ続けるしくみを作ること(=ブランディング)
大切なのは、いずれも『お客様視点』です。
お客様が価値を感じるものは何か?どういう人が欲しいと思ってくれるのか?どうしたら買い続けてくれるのか?など
お客様の視点で考えないと答えは見つからないですね。
「マーケティング思考」とはお客様の視点で考えることです
そんなこと分かっていると思うかもしれませんが、長くその業界で仕事をしていると、当たり前になっていて、初めて商品やサービスを購入するお客様の視点が分からなくなってしまうことはよくあることです。
それを解消してお客様の視点で考えられるように、フレームワークなどを活用して売れる仕組みづくりを一緒にしていきましょう!
また、売れ続けるしくみをつくるとは、ブランドとして好きになってもらうこと=ブランディングでもあります。
順を追って一緒に作業できるようワークシートを用意しているので、ダウンロードして使ってみてください(個人情報入力不要です)
マーケティングで重要なこと
まず最初に、マーケティングで重要なことについてお伝えします。
- ターゲットの設定
- お客様の心理を十分に分析すること
- お客様のニーズに合った独自性のある商品やサービスを見出すこと
- 価値を分かりやすく言語化して伝えること
まず何より、どんな人をターゲットに設定するのか。これが一番です。どんな人、というのは年齢や性別といった属性というよりは、『どんな悩みや課題を持っている人なのか』という意味です。
そのために、②のお客様の心理分析がとても重要です。
そして、自社が提供できる独自性のある商品やサービスはなんなのか、目に見える商品やサービス以外でも、お客様に与えている価値が必ずあります。
それが選ばれている理由になりますので、そこをしっかり認識して発信すると競合と闘わなくてよくなります。
そして、その価値をしっかりと伝わるよう適切な方法で発信し、お客様と継続的なコミュニケーションをとることで売れ続けることができるようになります。
基本的な手順
マーケティングを考える上では次の手順が重要です。まずは、自社とその周辺環境を把握した上で、STEP1に進みましょう。
STEP1と2は行ったり来たりしても良いですが、基本的にはこの順番が大切です。1と2がはっきりしないまま3をやると失敗しますので注意しましょう。
自社の強みや弱み、特徴、お客様や市場環境、競合の状況を把握する
どんな悩みや要望を持っている人を対象とするか
そのお客様にとって価値がある自社の強みやこだわりは何か
必要としている人にその強みやこだわりをどんな媒体やツールを使って伝えるのか
では順番に考えていきましょう!
自社と自社をとりまく環境を把握する
まず、自社と自社をとりまく環境について『自社』と『顧客』と『競合』の3つの視点で考え、『お客様からニーズがあり、競合が提供できない自社が提供できる独自性の高い価値』は何なのかを考えます。
この独自性の高い価値の部分を『バリュープロポジション』と言います。
ちなみにこの分析のことは、自社:company、顧客:customer、競合:competitorの頭文字から『3C分析』といいます。特に名前は覚えなくてもいいです。
そんなものあったら苦労してないですよ
まあ、そう思いますよね。。
大丈夫です。後ほど詳しく考えていきますので、次のような視点で書きだしてみましょう。
ここでは、量を出すことが大切です。
あまり枠やルールにとらわれずたくさん書き出してみてください。競合は代表的な会社をいくつか想定してみましょう。
あまり自社のことを他社と比較して分析したことが無かったですが、
書いてみたら少し特徴が見えてきた気がします。
そうなんです。こうして俯瞰して見てみると見えてくるものがあります。
では次からもっとはっきりさせて、必要な人に伝えられるようにしていきましょう。
誰を対象とするか
次に、誰をターゲットとするかです。
誰でもいいから買って欲しいです!
そう思う気持ちも分かりますが、誰でもいいと、誰にとっても中途半端なものとなり、購入し続けてくれるファンを作るのは難しいんですね。
お客様に、「こういう商品やサービスを探していた!」「これは私にぴったりの商品やサービスだ!」と思ってもらうことが大切なんです。
そのために、ターゲットを絞り、お客様の心理をよく考えます。
そうやって開発した商品やサービスは、結果的にその目的としたターゲット以外の同じ課題をもつ顧客層からも支持されるようになりますので、まずはターゲットについてよく考えましょう。
はい!分かりました!
素直・・・
セグメント分けとターゲット設定
まずは顧客を以下の要素で分けてみます。
セグメント分けとは、属性などで分けるということです。
ここは自社のお客様になるかならないかは気にせず、属性などで形式的に分けてみてください。
心理的要素は分けるのが難しいと思うので、自社に関連がありそうなという視点で大丈夫です。
また、自社に関しても、一度購入したことがある顧客をイメージして書ければ書いてください。
あまり細かい部分にこだわらず、書けるところを埋められれば大丈夫です。
それができたら、分けた中からどこをターゲットにするか、書きだした要素を見ながらざっくり決めていきます。
事前に顧客、自社、競合の分析をしているので、それを参考にしながら、自社が提供できる商品やサービスに合うお客様はどんな人だろうかと考えて決めましょう。
ターゲット心理の深掘り
次に、ターゲットとなるお客様の心理を深く考えるため、詳細な人物を設定してみましょう。
人物像のことを『ペルソナ』と言います。
ここで大切なのは、このペルソナを感情のある人物としてとらえ、心理を考えることです。
顧客が本当に望むことを知り、それに対応する価値を提供できるように、「な・な・り・は」(どんな悩みがあり、なぜ悩んでいるのか、理想の姿は何なのか、なにがそれを妨げているのか)といった深層心理を想像しやすくするためにペルソナを設定します。
その顧客の深層心理のことを『インサイト』と言いますが、特に覚えなくてもいいです。
ペルソナを設定したら、ペルソナになりきって、先ほどの「ななりは」を考えてみましょう。
覚えなくていい情報をちょいちょい挟んできますね
大切なのはベネフィット
ここで、お客様が本当に望んでいる価値である『ベネフィット』について説明しておきます。
『ベネフィット』はぜひ覚えましょう
メリットと似ていますが、メリットは単に利点であるのに対し、ベネフィットとは、顧客が望む嬉しい未来のことです。
お客様は、商品やサービス自体に価値を感じてお金を払っているのではなく、その先にある嬉しい未来を得るためにお金を払っています。
メリットとベネフィットの違いは次の通りです。
大切なのは、お客様にメリットではなく、ベネフィットの形で伝えることです。
そうすることで、嬉しい未来をイメージすることができ、購買につながります。
なるほど、確かに。でも考えるのが難しいですね。。
大丈夫です。簡単に見つけられる方法があります。
ベネフィットの見つけ方
顧客が本当に望んでいること=自社が提供できる価値、ベネフィットを見つけるには次の手順で考えてみましょう。
- 自社の商品やサービスの特徴(メリット)を挙げてみる
- それに対して「だからなに?」と聞いてみる
- たくさん出たベネフィットはターゲットに合わせて提示する
うちの店は材料にこだわっているのが特徴です
は?だから何?
え!えーとえーとえーと
※優しく聞いてあげましょう。
何をウリとするか
ターゲットとするお客さまの心理を考えられたら、次は何をウリとするかについて考えていきます。
バリュープロポジションキャンバス
最初に、『お客様からニーズがあり、競合が提供できない自社が提供できる独自性の高い価値』(=バリュープロポジション)を見つけるために『自社』と『顧客』と『競合』の3つの視点で考える3C分析をしましたが、それをお客様視点でさらに深掘りしてていきましょう。
バリュープロポジションキャンバスというフレームワークで考えてみます。
このフレームワークを使うと、3C分析よりもよりお客様視点でバリュープロポジションを見つけられます。
バリュープロポジションキャンバスでは①でターゲットを設定したら、順番に②の顧客が解決したい課題、悩み、③の嬉しい未来、と考えていきます。
それができたら、②~④に対して自社が提供できることを考えていきましょう。
先ほどペルソナを設定して「ななりは」とベネフィットを考えているのですぐ書けそうですね。
最後に⑧でそれらをまとめて言葉にします。これが顧客のニーズに対応した自社の提供できる価値です。
他社と比較してみる
さらに競合との違いを明確にし、独自の価値を見つけるために、他社との比較をしていきます。
次のように、お客様が選ぶ時に気に選定基準となることを考えて書きだしていきます。
その際、必要最低限の条件かどうかもチェックし、優先度が高いと思われるものを書きましょう。
必要最低条件は、これがないと選ばれませんので、満たしていなければまずはここから改善です。
ちなみに、お客様が選ぶ時に気にすることを『購買決定要因:KBF(Key Buying Factor)』といいます。お客様が商品の購買を決める際に重視する要素ということですね。
これは、、、覚えなくて、、
いいです。
いろんな言葉が出てくるので、いちいち暗記する必要はないです。考え方を理解していれば大丈夫です。
ポジショニングマップで見える化
要素を書き出して競合と比較できたら、以下の右のようにマップにしていきます。
ここで大切なのは、まず先に自社をカドに設置すると決めることです。
え?そうなんですか?
そうです。そうなるように、先ほど挙げた選定要素を上下左右に配置していきます。
先に要素を置いて後から自社を置くと、カドにならない場合がありますが、そうすると、他社と差別化できず埋もれてしまいます。
ですから、先に自社をカドに配置し、自社が埋もれない選定要素を選んで置くということですね。
それが自社が他社と差別化できる、尖っている点です。
選定要素は、プラスとマイナスのように対になりますが、ポイントはどれもプラスの意味になるようにすることです。
例えば、高級の逆は「安っぽい」ではなく「手ごろ」というようにです。お客様にとって購入の要素になるように言い換えましょう。
要素を2つ掛け合わせるので独自性が出しやすいですね。
バリュープロポジションを言語化する
ここまで、色々検討してきたことを言葉にまとめましょう。
次の文章に当てはめて考えてみてもいいですし、枠に入れずに考えてもいいので、いったん言語化しましょう。
これがバリュープロポジションであり、顧客ニーズに対応した自社独自の価値です。『コンセプト』や『ウリ』と言い換えてもいいと思います。
何をどのように伝えるか
自社の独自のウリを言葉にできたので、ここからどのように伝えるかを検討しますが、その前に4つの切り口で自社のマーケティング戦略を整理しておきましょう。
4つの切り口とは、商品、価格、流通・チャネル、プロモーションです。これらの英語の頭文字が全てPなので4Pと言います。
はい!名前はいちいち覚えません!!
このうち、商品や価格は「何を」にも近いですが、コンセプトや独自の価値を伝えるために、どんな商品開発をしてどんなデザインにした方がいいのかや、どんな価格設定が適しているかなどと考えると、「どのように」とも考えられますね。
次の図にあるような視点で自社のバリュープロポジション(コンセプト)に合った商品を考え、価格設定をしていきましょう。
自社のコンセプトに合っているかが大切です。
そして、「どのように」を考えていきますが、提供方法や場所である「流通・チャネル」を検討し、顧客とどんな接点を持ち、価値を伝える手段であるプロモーションを検討します。
売上を分解して4Pで考える
売上を上げる方法を考える際は、いきなりどうするか考えるのではなく、まず以下のように客数と客単価に分解することが大切です。
そしてさらに、客数を増やすには新規客と既存客、客単価を上げるには価格アップか購買点数を増やすか、に分けます。
その上で、どうやってその目的を達成するか4Pの視点で考えると色々とアイディアが出てくると思います。
そして、プロモーションを考える時には、さらに顧客に合わせた手段を選べるよう、お客様の行動の流れを考えてみましょう。
カスタマージャーニーマップ
お客様は何か商品やサービスを購入する時に、次のようなステップを踏むと考えられます。
業種によって違うと思うので、ステップの部分はアレンジして大丈夫です。
そのステップが次から次へと進めるように、それぞれに対応したプロモーション施策を考えます。
まずは上から順に、ニーズが発生するのはどんな時だろうか、お店を知るきっかけはどんなことがあるだろうか、と考えてみます。
次にその時の感情も考えて記入していきましょう。
さらに、その接点、理想の体験と考えた上で、お客様が次のステップに進むために何をすればよいか、対策を考えます。
こうすることで、お客様の行動と心理状況に合った施策を考えることができ、自社を知ってからファンになるまでの施策がつながるようになります。
ターゲットに合ったコミュニケーション手段
施策としては、WEB上での施策とリアルでの施策を分けて考えてみてください。
ターゲットがどんな人物かによって、接点も変わりますね。
具体的施策は先ほどの4Pの例も参考にしてみてください。
SNSを活用する場合は、年齢や性別等でよく使われている媒体が違いますし、その目的も変わります。
次のデータはNTTドコモモバイル社会研究所が調査した年代別のSNS利用率とSNSでの情報収集方法です。
このように、年代によって適したツールが違いますし、SNSを使う目的も違いますので、ターゲットに合わせた媒体を選ぶことが大切ですね。
詳しく知りたい方は、上記のリンクからデータを見てみてください。
マーケティングの流れ・全体像
ここまで、細かく「お客様視点」を重視して施策を考えるところまでやってきましたが、今回説明した全体の流れはこのようになっています。
マーケティングという定義が様々あるため、手順も色々あるのですが、大切なのは「お客様の視点」で考え、お客様に高い価値を感じてもらえる独自の商品やサービスを届けることです。
それを考えやすくするための分け方ですので、ある程度アレンジしていただいても大丈夫です。
情報発信で大切なこと
では最後に、何をどのように伝えるか、情報発信で大切なことをお伝えします。
お客様が来ない理由
あなたの商品やサービスをお客様が購入しないのは、もちろん商品やサービス自体に問題があるということもありますが、長年営業していて少しでも気に入ってくれているお客様がいるのであれば、商品に魅力がないのではなく、次のような理由が考えられます。
- 存在を知らない
- 自分が求めている結果が得られる商品・サービスなのか分からない
- 他と比べて得なのかどうかわからない
- そもそも選ぶ基準が分からない、求める結果に対する手段が分からない
- 求めている結果に対する予算に合っているか分からない
- 自分が気持ちよくやりとりできる人がいるか(話を聞いてくれる?融通きかせてくれる?)
- 購入、依頼方法が分からない
- 失敗したときのリスクが気になる
- 信頼できる会社か分からない
- 声をかけてもらえれば行動するけれど、自分から声をかけるほどではない
これらの買わない理由を解消するために、お客様に必要な情報提供をしていますか?
どれも、ちょっとしたことで、お客様から聞かれたら答えられることが多いと思いますが、聞かれなくても事前に伝えられればもっとお客様が増えると思いませんか?
確かに、、伝えられていなかったかも。。
ですので、SNSやホームページ、チラシ、看板など、お客様との接点となる場所でしっかりと伝えられるように意識してみてください。
お客様とのコミュニケーションのコツ
また、伝え方のコツとしては、次の点を意識しましょう。
- ネガティブ要素は先に伝える
-
お客さまからの要望は分かっているけれど、理由があって応えられないことは、強みに変わることがあります。
例えば、短期間で工事コストを抑えて欲しいという要望はあるけれど、自社はそれに対応できないとします。
その理由は、短納期の工事では品質が十分に担保できないからです。無理な工期短縮は後々メンテナンスが必要になるため、結果的にコストが高くなる、というような事情があったとします。
その理由を知れば、品質にこだわりがある会社なんだという強みとして捉えられることもできますよね。
聞かれてから答えると言い訳のように聞こえてしまうことも、事前に伝えると強みとして伝えることができます。
- 理想の行動を提示する
-
お客様に具体的にどう行動して欲しいかを伝えていますか?おすすめしてくれたら頼むのに、ということは意外とあるものです。
ですから、お願い事項は「こうして欲しい」としっかり伝えましょう。POPで壁に貼るだけではなく、ひとりひとり声をかけることが大切です。
- ヒアリングを十分にする
-
特に、サービスを提供している場合、お客様は何も知らない素人で、選ぶ基準も何がいいのかも分かっていません。そのため「どうしますか?」と聞かれても選べないことがあります。
ですから、本当に望んでいることをしっかり聞くことが大切です。さらに「要望はこれで全部ですか?」と確認しましょう。要望は一つとは限りませんし、もっと追加でサービスを頼みたいと思っている場合もあります。
おさらい
では最後におさらいです。
マーケティングで大切なことは次の通りです。
- ターゲットの設定
- お客様の心理を十分に分析すること
- お客様のニーズに合った独自性のある商品やサービスを見出すこと
- 価値を分かりやすく言語化して伝えること
これらを意識して、丁寧にマーケティング戦略を考えていきましょう。
ぜひフォーマットを使ってチャレンジしてみてください。
ここまでしっかりフレームワークに落とし込んでおけば、色々な施策をチーム分けてで行う場合でも同じ認識で一貫性を持った対応ができます。社外の人に依頼する時も意図を伝えやすくなります。
具体的な施策に取り組む前に、じっくり考えて見える化をしておきましょう。
ではまた!