マスミどうもどうも、中小企業診断士のマスミです
今回のテーマは「経営改善計画策定支援」(通称405事業)についてです。
私は現在、専門家として、事業者さんと一緒に経営改善計画策定の仕事をさせていただいています。
専門家の目線でどんなことを考えてどう進めているかをお伝えしていきますので、これから405事業の仕事をしてみたいと思っている中小企業診断士の方や、また、支援を受けたいと思っている事業者さんにとっても、役に立つ内容かと思います。
- 経営改善計画策定時の専門家の役割
- 経営改善計画策定支援の仕事内容
- 経営改善計画策定時の流れ
はじめに
405事業について
そもそもですが、経営改善計画策定支援事業(以降405事業)は、資金繰りが厳しくなった事業者さんが、金融支援を受けて経営改善をして業績を回復することが目的としてあります。
まずはどんな制度が知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
※2026年5月から制度変更がありますが、それ以前の内容です。


「経営改善計画書」は、会社が作る計画で、社長の名前で作成しますが、専門家が社長のお話を聞きながら、資料に落とし込む作業をしています。
専門家というのは、認定支援機関として登録している人や組織のことです。認定支援機関についてはこちらの記事をご覧ください。


金融支援とは、返済を一時的に止めるとか、返せる分だけ返すとか、金融機関に借りているお金の返済条件を変えてもらうこと(リスケジュール=リスケ)や、借入期間を長くして返済額を少なくして資金繰りを良くしようとする(借換え)ことなどが多いです。
他にももっと色々支援の方法はありますが、405事業ではこんな内容が多いです。
※2026年5月以降は制度変更があり、リスケのみ対象となります。
今回お伝えする内容、流れはあくまで私が行っているものなので、これが必ずしも正解という訳でもなく、担当している専門家がみんな同じ考えということでもないので、その点はご理解いただき、参考にしていただければと思います。
私の経歴
いったいどれほどのことをやっている人の話なのかが分かった方が参考にしやすいと思うので、簡単に私の経歴をお伝えします。
- 2021年11月
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2020年のコロナ禍の自粛期間にずっと勉強していまして、無事合格して2021年に中小企業診断士登録をしました。それまでは住宅設備メーカーの営業なので、決算書も見たことが無かったです。
- 2022年
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独立しようと考え始め、事業再生のプロコン塾で毎月1年間勉強しました。
- 2023年
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会社を辞めて独立し、先輩と一緒に事業再生計画や今回の経営改善計画策定の仕事に3社関わりました。最初は外部環境と経営分析だけから始め、すこしづつ担当範囲を広げてもらいました。
- 2024年
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405事業よりも、資料作成の要件が少ない「収益力改善計画」のご支援を1人で担当しました。そこからつながって、もう1社収益力改善計画を担当しました。
さらに再生計画を3社、こちらは先輩とチームで対応していますが、大部分を私が作成して先輩にまとめてもらったり、一部分担したりという感じでした。再生計画は、405事業より作成する資料の量も多く、別途事業デューデリジェンス(DD)が必要な計画です。
※ここまででてきた「計画」を整理すると、作成する資料の量や深さ、要件の有無など全体を加味した仕事量の大きさは、再生計画が100とすると405事業が80~60(事業DDの有無による)、収益力改善計画が20くらいのイメージです。(あくまで私の体感です)その他に保証協会の計画策定もありますが、それは15くらいですかね。
- 2025年
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405事業が仕事の中心になり、1年で7~8社くらい担当しました。この年からは全てひとりです。計画策定の期間がスタートから半年くらいはかかるので、常に6社くらいは同時に動いている感じです。その他に保証協会の計画策定が2社あり、2025年は計画ばかりでした。
- 2026年3月現在
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昨年から引き続き405事業の仕事です。3月現在で5社関わっています。
この仕事を本格的に始めて2年と少し、計画策定で関わった事業者さんは20社程度です。1年に担当する案件数としては比較的多い方だと思いますが、ありがたいことに、最近では金融機関の融資部の方から指名をいただいたり、「マスミさんが担当で良かったですね」と事業者さんに言っていただいたりする機会があり、驚いています。
まだまだ経験豊富とは言えませんが、金融機関からも一定の評価をいただけるようになってきているので、先輩から学び、実践してきたことや実体験として学んだことを整理してお伝えしようと思いました。
これから取り組む方にとって何かしら参考なればと思います。
初回面談
まずは事業者さんと顔合わせをします。私の場合は金融機関からの協会へ依頼があり、私が担当となる、という流れなので、事業者さんとメインバンク(本部の担当者と支店担当者)と私、といったメンバーが多いです。
この時私が意識していることは、社長が主体的に経営改善をしようと思ってもらうこと、それから不安を解消することです。
そのために、次のようなことを話します。
- この計画策定は何のためにやるのかという目的
- これをやることでどんなメリットがあるのか
- なぜ私が担当になったのか
- この制度の仕組み、流れ
- 勝手に私が作ることはしない、社長が考えていることを形にするのが私の役割
初回なので、この程度の話です。
資金繰りが悪化し、すごく不安な状態な上に、よく分からない「専門家」という人を紹介され、きついことを言われたりするんじゃないかと心配している方が多いと思います。
後から、怒られたらどうしようと思っていたんですよ、と言われることがあるので、実際そうなんだと思います。
ですから、私は社長の味方で、怖くないですよ、心配しなくて大丈夫ですよ、と伝わるように笑顔で話しますし、ここで何を言われても、ダメ出しもアドバイスもしないです。
ここでは、制度の説明や申請書類を作成するための手順と必要書類の説明、簡単なヒアリングを行い、次のアポをとります。
利用申請と必要書類について
405事業で計画策定をする場合は、利用申請書の提出が必要です。また計画策定に伴い、色々と書類を用意してもらう必要もあります。
参考までに、私の所属する協会の場合の手続きと、私がお願いしている書類のリストがあるので載せておきます。人によって違うので、あくまでざっと参考にしていただければと思います。
(2026年3月時点の内容なので制度変更で変わる可能性はあります)
2回目~3回目面談
ここからは事業者さんの会社で社長と二人で話すことがほとんどです。
それで、もう一度、この制度や進め方で疑問に思っていることがないか、不安なことがないかお聞きします。金融機関の前で話せなかったことがあるかもしれないからです。
そこで何か出てきたら、じっくり説明をしたり、事情を聞いたりします。そして、



この計画書を作ることは、会社を見直す良い機会だと思います。せっかくお金を払っていただくので、ただ金融支援のためだけに作るのではなくて、本当に社長が考えていることを形にする計画書にした方が得です。
今までよく分からなかったことや困っていたことがあったらこの機会にぜひお話してください。何でも聞いて大丈夫ですから。
と伝えます。社長のタイプによって言い方は変えていますが、だいたいどこかでこの話をしていると思います。
これ全部本心です。
だって、わざわざ時間もお金もかけて計画書を作るので、その結果がただリスケ(条件変更すること)だけだったらもったいないですよね。
これをきっかけに、何か社長の中で、そうか、こうすればいいのかとか、資金繰りの不安がなくなるような気付きになった方がいいですよね。
計画を作るために私が聞いたことに答えてもらう以外、事業者さんからあれこれ質問をされたら、その分時間がかかりますし、計画の進みも悪くなります。でも、そんなことは全く気にしていないです。
なぜなら、この計画書の目的は、会社が二度と資金繰りで困らないようにするための改善で、それをするのが私の役目だと思っているからです。
そのためには、社長の考えや認識を変えてもらうことが必要な場合もあります。
そうでなければ、また繰り返すことになります。それは、会社にとっても、金融機関にとっても、誰もいいことがないです。だから、このタイミングで社長が何かに気付いて、もう大丈夫だ、と思ってもらうことがすごく重要です。
とはいえ、時間を無限にかけているということではありません。
かけられる時間に制限はあります。その範囲の中でできることはやる、ということです。
とういことで、2回目の面談では、まず初回面談や今後についての疑問や不安の確認を行った後、ヒアリングに入っていきます。
どんなものを成果物として作成するかは、こちらが参考になるかと思います。
中小企業庁が出しているサンプルです。
ただし、これよりもっとたくさん作成しています。30ページくらいにはなります。
2回目の面談の前に行う準備はだいたい次の通りです。
Excelフォーマット
- 決算書10期分(できなければ最低3期分)入力してグラフにする
- 業界比較
- 借入金の明細入力
パワーポイントフォーマット
- 事業概要ページの作成
- グールプ相関図の作成
- ビジネスモデル俯瞰図の大枠作成
- 組織図の作成
- 10期分の振返り(グラフ貼付)
- 直近3期のBS、PLデータ貼付、業界比較
資料はパワーポイントで作成しますが、Excelのフォーマットを使っていて、計算したものを貼付しています。
面談の時はモバイルモニターでパワーポイントの資料を見せながら、お話を聞いて、それを資料に書き込んでいきます。
順番は上記の通りです。
これ、理由がちゃんとあります。
①事業概要、②グループ相関図(企業集団の状況)
事業概要のページでは、経営理念や5年後のビジョン、創業の経緯などをお聞きします。ここで社長がどんな考え方なのか、何を大事にしているのかを理解しようとしています。
また、単に悪いところを改善する計画ということではなく、5年後にどうなっていたいかという明るい未来についてのイメージを持ち、そこに向かって頑張ろうと思ってもらいたいからです。
②のグループ相関図は大枠を確認したいからです。予め作成したものの確認で終わることが多いです。
③ビジネスモデル俯瞰図
次ビジネスモデル俯瞰図を作成することが多いです。これは、ビジネスの流れが分からないとその後のヒアリングがしにくくなるからです。
ただ、私の場合は顧客別の売上高や仕入先ごとの仕入高などは総勘定元帳をいただいて集計して作成するので、ここではどういった顧客がターゲットで、モノとお金がどう流れているのかをざっとお聞きしています。
売上高は、顧客別に上位5社くらいまで数値と比率を出し、それ以外に分けられる要素があれば追加します。例えば商品別や、新規・リピーター比率などです。
④組織図の作成
ビジネスモデルが理解できたら、次は組織体制の確認です。
やはり組織がどうなっているのかが分からないと話がしにくいので、早めに確認します。最近は、あまり人数が多くない場合は全員の年齢と役割などもリストにしています。
⑤過去10期分の振返り
10期分のグラフは、この10年で売上高、借入金、営業利益がどう変化したのかを表したものです。これまでの歴史を振り返っていただき、いつ何があって今こうなっているのかと考えていただきます。
私はこの部分はかなり大事にしています。
経営改善計画書は、これが窮境要因(資金繰りが苦しくなった原因)で今後はここを改善すれば業績は回復できる、というストーリーにしていきたいので、過去にどんなことがあったか、それはなぜそうなったのかなどをしっかりと確認したいです。
事前に、10期分のPLを見ながら、この時赤字になったのはなぜか、という要因を確認しておきます。人件費が大きく増えているなとか、原価が上がったなとか。
そこで、利益に影響している科目があれば、別でグラフにします。
ヒアリングでは、外部環境、内部環境をお聞きし、それが売上や利益、借入金にどう影響したのかを明確にしていきます。
⑤直近3期のBS、PLと業界比較
BSとPLについては、科目ごとに、これがどんな費用なのかなどを確認すると共に3期間で変化が大きい科目についてなぜこうなったのかを確認していきます。
ここで意識していることは、細かな科目の説明というよりは、全体を見て、どんな特徴があるのかを把握しようとしています。
BSでは現預金がどれくらいあって、運転資金にどれくらい余裕があるか、資産と負債のバランス、売上に対する売掛金、買掛金の大きさ、売上に対する借入金の大きさなどや、債務超過の場合が多いですが、なぜ債務超過になったのかなど。PLからのつながりも見て、こんな特徴がある会社だ、とまとめるようにします。
PLでは、コストがかかっているのはどこか、継続的に発生する費用なのかなどを確認します。減価償却費を計上していないこともあるので、理由を確認して次からは計上してもらうようにします。
また、不自然な点があればそこも確認していきますが、すぐに話しにくいこともあると思うので、3回目以降にすることもあります。
業界比較は、公庫の「小企業の経営指標」と予め比較しておいたものを説明する感じです。
ということで、2回目~3回目では、話しやすいように会社の概要やビジネスモデルから入り、数字の話はその後にしています。
決算書について確認をする際、社長があまり内容について把握できていなかったり、決算書を見るのが苦手だというお話が出たりするので、その時は、決算書の見方と使い方について説明もします。
という流れで、ヒアリングをしながら資料をまとめていきますが、、



長くなったので今回はここまでにしておきます。
続きは次回へ!しばらくお待ちください。








