こんにちは。中小企業診断士のマスミです。
これまで、会社経営には、企業理念や戦略が大切ですよ~とお伝えしてきました。
経営理念?戦略?と思った方はまずこちらの記事を読んでみてくださいね。
戦略の基本では、中小企業がとるべき戦略はターゲットを絞ることが大切です。差別化が大切です。とお伝えしました。
ですが、いざ戦略を立てるぞ!となると・・・
ターゲットが分からない!差別化できることって何?
となりますよね。
それを知るために「環境分析」が必要です。
説明しよう
環境分析をすると、自社の置かれている状況を把握してターゲット市場を決めたり、差別化できる強みをはっきりさせることができるのだ。
そうですね。
そして限られたヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を有効活用することが大切ですが、「強みを知る」とは、経営資源が何なのかを知るということでもあります。
ということで、今日は環境分析の仕方をお伝えします。
フレームワークを使うことで、抜け漏れなく、簡単に整理することができますので一緒に考えていきましょう!
- 環境分析に役立つフレームワークの種類
- フレームワークを使った分析の仕方、考え方
- 環境分析で見えてきた情報の使い方
環境分析とは?なぜ必要か
まず、環境分析がなぜ必要なのかを確認しておきましょう。
会社経営において、会社の目標、めざす姿を達成するためにどうするか、と考えます。
現在の姿とめざす姿のギャップを埋めるのが『戦略』です。
効果的な戦略を立てるには、そもそも「現状」と「目標」が何かがしっかり決まっている必要がありますよね。
その「現状」を把握することが「環境分析」です。
目標を立てることと同じくらい重要ですね!
自社が置かれている状況、自社が持っている強みや克服すべき点、それらを全て出して整理することで目標達成に向けた効果的な戦略を立てることができます。
フレームワークとは?
現状を把握するために大切なことは、抜け漏れなく情報を出していくことです。
そのために「フレームワーク」というものがあります。
漠然と考えるよりも、この点はどうだろう?とあらかじめチェックするポイントが決まっていて、そのチェックポイント自体が抜け漏れなくなっていれば、やりやすいですよね。
ということで、フレームワークを活用して環境分析をしていくこと方法をお伝えしていきます。
特に代表的なもので使いやすいものを紹介しますので、ぜひ一緒にやってみましょう!
環境分析の基本、SWOT分析
環境分析をする時に必ずといっていいほど登場するのがSWOT(スウォット)分析です。
SWOTとは以下の頭文字をとっていいます。
- Strength(ストレングス)強み
- Weakness(ウィークネス)弱み
- Opportunity(オポチュニティ)機会
- Threat(スレット)脅威
このうち、S、W(強み、弱み)については自社の内部のことを指します。内部環境といいます。
O、T(機会、脅威)については、社外のことを指します。外部環境といいます。
内部環境と外部環境の一番の違いは、『自社でどうにかなるかどうか』で考えてください。
どうにかなれば内部環境、ならなければ外部環境です。
SWOT分析は、内部環境と外部環境の両方の分析ができます。
このフレームに沿って考えても良いのですが、なかなかすぐに思いつかない場合もありますので、これから紹介する外部環境と内部環境に分けたフレームワークを使って分かったことを最終的にSWOT分析に書き込むという方法が良いと思います。
SWOT分析をしたら何がいいんでしょうか?
SWOT分析の使い道は会社の方向性を決めるということです。
まずは『強みを機会に生かすこと』を考えます。
市場にはどんなチャンスがあるか、それをうまく生かす強みはないだろうか、と考えることができます。
その他は、脅威をカバーする強みはないかや、弱みを克服するためにどうしていくか、など会社と会社をとりまく環境全体を把握して、会社の方向性を考える時に活用します。
なるほどなるほど~
外部環境分析
では外部環境を分析するためのフレームワークを紹介します。
PEST分析
外部環境分析でよく使われるのがPEST(ペスト)分析です。
また横文字・・・
これも英語の頭文字からきているのですが、私は英語が苦手(というか何年も勉強していないので忘れている)なので、この英語が正確に浮かんできません。。特にP・・
ですので日本語で覚えています。
英語を覚えるより、政治・経済・社会・技術と覚えた方が早いですからね!
- P:Politics(政治)法令、法律の変更など
- E:Economy(経済)景気、為替の変化など
- S:Society(社会)人口の変化、流行、ライフスタイルの変化など
- T:Technology(技術)新しい技術、ITや生産技術の変化など
これらP・E・S・Tごとに現状を書き出し、それが自社(業界)にどんな影響を与えるかを考えます。
これは、SWOT分析の機会と脅威にあたりますので、プラスの影響なのか、マイナスの影響なのかを意識して考えてみましょう。
あれ?これは経済ですかね?これは社会?あれ?
そうなりますね(笑)大丈夫です。ざっくりで大丈夫ですよ。
大切なのは、これらの視点で考えて、抜け漏れなく把握することにありますので、細かいことは気にせずどんどん書き出してみましょう。
5フォース分析
5フォース分析とは業界の収益構造を把握するために使います。
つまり、儲かりやすい業界なのか儲かりにくい業界なのかを知るということです。
自社を囲む脅威を5つの力に分けて考えます。フォース(force)=力ということです。
それを知ってどうするの?今更業界変えられないけど・・・
まあそうですよね。
ただ、収益構造を理解すると、なぜ儲かりにくいのかが分かり、その上でどうやって収益を上げていくかを検討することができます。
また、今後の売上予測を立てる場合に生かすこともできます。儲かりやすい業界であれば、伸び率を高めに、そうでなければ低めに、といった風にです。
それから現在は補助金を活用して新しい事業を始めようとしている経営者の方も多いと思うので、新規参入する場合にはあらかじめこの業界構造を考えておく必要がありますね。
分析するには自社をとりまく以下の点について考えます。
- 業界内の競争
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
1.業界内の競争
その業界で競合の数がどれくらいいるのか、どんな会社が競合なのか市場が大きいのか、成長性があるのかなどについて考えます。
単純に競合の数が多かったり、競合がブランド力や資金力がある場合は収益性が下がることになります。
2.売り手の交渉力
自社に商品やサービスなどを供給している売り手について考えます。売り手の数が少なければ、自社の交渉力は下がり、逆に多ければ自社の交渉力が上がります。
その交渉力の大きさによって商品調達コストを抑えられるかどうかが決まります。
3.買い手の交渉力
顧客の数が多い、ニーズが大きいかなどで自社との力関係が決まります。買い手の交渉力が大きければ価格設定を下げるなどで収益性が下がります。
逆に買い手が多く交渉力が小さければ、安売りをする必要がないので、無駄な値引きをしていないかなどの確認も必要です。
4.新規参入の脅威
業界に参入しやすいかどうかについて考えます。
新規参入するための壁を『参入障壁』というぞ。
新規参入するにあたり、難しいノウハウが不要であったり、資金があまり必要なかったりすると容易に参入ができるため、価格競争に陥りやすくなります。
逆に大きな設備投資が必要だったり、熟練の技術が必要だったりすると、参入障壁が高くなり、参入しにくく、収益性が高くなります。
5.代替品の脅威
自社が提供している商品やサービスにとってかわるものを代替品と言います。
例えば、カメラのフィルムを販売していた会社は、デジカメが発売されてフィルムのニーズが著しく減ったことでしょう。
そしてスマホのカメラ機能が向上するにつれ、デジカメのニーズも減っています。
このように、自社の商品やサービスにとってかわるものが現れる可能性や、現れた場合にどれくらい切り替えに手間やコストがかかるかなどを考えます。
これらについて考えてみて、まずは自社の置かれている環境について把握する、ということが大切です。
どうでしょう。自社の置かれている業界の構造が見えてきましたか?
内部環境分析
続いて自社内部についての分析です。SWOT分析のSとWにあたります。
強みと弱みを考えていきますが、強みを考える時には以下のフレームワークを使うと整理しやすいです。
VRIO(ブリオ)分析
またまたアルファベットがでてきましたね。。これも頭文字をとったものです。
- Value(バリュー)経済的価値
- Rarity(レアリティ)希少性
- Imitability(イミタビリティ)模倣困難性
- Organization(オーガニゼーション)組織
自社が持っている経営資源(人、モノ、カネ、情報)の強みがどれくらい強いものがを明確に判断できます。
そのために4つの質問に答えていきます。
最も価値がある経営資源は右下の「持続的な競争優位かつ経営資源最大活用」になります。
例えば、陶器の食器を作る会社の経営資源として習得するのに20年かかる、職人熟練の技というものを考えてみましょう。
質問1「ビジネスに価値がある資源ですか?」
職人の熟練の技で作り出す手作りの食器のニーズがあるので、YESです。
質問2「似たようなものが無いですか?」
手作りの食器はありますが、20年もかかる技術自体、それほど多くの会社が持っているとは言えないので、YES。
質問3「マネしにくいものですか?」
これもYESですね。
質問4「組織として最大限生かせるようになっていますか?」
例えばこの技術を継承するために若手育成に力を入れている、その技術を持った職人が十分集中できるようサポートしているなどしていればYESです。
ただ、技術を持った職人が様々な仕事を兼務していたりして、十分な環境が整っていなかったらNO、ですね。
このように、その資源がどれくらいその会社にとって価値があるかを判断することができます。
価値のある強みを最大限生かすということを考えて戦略を立てていくんですね。
分析まとめ
それでは、これまで外部環境、内部環境ごとに考えてみましたがそれらをSWOT分析に落とし込んでみましょう。
先ほど出てきた陶器の食器を製造する会社を例にしてみます。
SWOT分析までできたら、これを元に戦略を考えます。
基本的には機会を捉えて強みを生かす方向性です。
なるほど~、整理したので考えやすくなりましたね。
まずは自社の現状をしっかりと把握すること、それが良い戦略を立てるベースとなります。
ぜひチャレンジしてみてくださいね!
戦略の立て方については「ランチェスター戦略」をご紹介しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
また、マーケティング戦略についてはこちらをどうぞ!