こんにちは。中小企業診断士のマスミです。
今日は経営理念について考えてみましょう。
ではび~社長、び~社の経営理念はありますか?
あ、え~と、え~とですね。設立した時に考えたんですけど、、だいぶ恥ずかしくてですね。。ちょっと今はあんまり、、
なるほどなるほど。
経営理念は一応あるけれど、ずいぶん昔に作ったもので今の事業内容には当てはまるところが無いということですかね。
それではこれを機に経営理念を考えていきましょう。
経営理念はもちろん長く継承していきたいものですが、事業形態が変わってしまっていたり、あまりに実態とそぐわないものである場合は見直しをしてみると良いですね。
まあ、経営理念が大事だというのは分かるんですが、そもそもどう役に立つんですかね。額縁に入れて飾っておくとカッコイイからですかね。
なんと!
経営理念は額縁に入れて飾っておくものではありません。(当たり前です)
ではなぜ経営理念が大事なのか、どう役立つのかも含めて
わしがしっかり伝えていくぞ。
おお!はかせ、心強い!
- 経営理念は一応あるけれどたいして機能していないと思う経営者の方
- 経営理念自体が無いという会社の経営者の方
- 経営理念てなぜ必要なの?と疑問に思っている経営者の方
- 会社経営の全体像が知りたいビジネスマンの方
ではさっそくいってみましょう。
企業経営の全体像
※「経営理念」と似た表現で「企業理念」というものもあります。厳密には違うのですが、ここでは同じように会社経営の起点となるものとして「経営理念」としてお話します。
経営理念について考えるにあたり、最初に企業経営について全体構成を確認するところからはじめましょう。
企業経営の全体像
説明しよう。
企業経営の全体像は「経営理念」「経営目標」「経営戦略」「戦術」があり、以下のような位置づけでピラミッドを形成しているのだ。
経営理念を実現した将来像、経営目標に対し、経営戦略はそれらに向けた打ち手となります。
経営戦略を元にして、より具体的な打ち手が戦術です。
上にあるものほど中長期的視点で抽象的、下の方が短期的で具体的になりますね。
戦略策定プロセス
戦略を考える時は上から順に考えていきますよ。こんな順番です。
詳しくは次項で解説しますが、会社の存在意義である経営理念を考えるところからスタートです。
それに基づいて社員の行動規範なども考えていきます。それらは社員全員で共有できるようにします。
抽象的な経営理念から具体的な数値目標や行動目標に落とし込んでいきます。
自社を取り巻く外部環境と社内の内部環境を分析します。
環境分析した上で、ターゲットとなる顧客や事業を選定します。
どんな人をターゲットにしようとか、どんな商品やサービスを提供しようかを考えるということですね。
ターゲットに対して具体的な数値や行動目標である経営目標と現状とのギャップを埋める打ち手を考えます。
これが会社全体の戦略です。
会社全体の戦略ができたら、もっと細かく、販売、マーケティング、人事、財務などに分けて戦略を考えていきます。
経営理念とは
このように、会社の戦略を策定するにあたり、最も上位でベースとなるのが経営理念です。
経営理念に基づき経営目標、戦略を立てていくことになるため、まず経営理念をしっかりと策定する必要があります。
そうしないと、戦略がブレブレでどこに向かっていくのか分からなくなります。目的地を設定せずに旅に出るようなものなのです。
まず、理念という言葉についてですが、
説明しよう。
「理念」という言葉は ”ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え” とされているのだ。
出典:weblio辞書
つまり経営理念とは、「私たちの企業はこうあるべき」という考えを言葉にしたものと定義できます。
経営理念は、会社の持っている「価値観」「社会的な役割」「存在意義」など、会社の重要な考え方を社内外へに示す役割があります。
これらの経営理念の表現方法はいろいろあるのですが、その構成要素としては次の3つが主に考えられます。
ミッション(企業としての使命)
ミッションは社会のニーズや課題に対し、自社が提供できる価値のことです。
自社ならではの強みや「らしさ」を明確にし、それらを社会が抱える課題解決につなげていくことが使命となります。
ビジョン(実現したい未来)
ビジョンは自社の目指す将来像を表します。
ミッションを遂行することで辿り着きたい未来像となります。
会社経営を通じてどんな社会にしていきたいか、という社会的意義も含まれます。
バリュー(企業の価値、強み)
バリューとは自社が持つ独自の強みや価値のことです。
自社がお客様に対して何を提供できるのかといったことの他、何を大切にしているかという企業姿勢も含まれています。
なるほど~。経営理念にはいろんな要素が含まれているんですね。
そうなんですよ。こうやって分けると考えやすいですね。
経営理念があるメリット
では、経営理念があるとどんないいことがあるのでしょうか。
経営理念は、自社が将来的にどのように成長していくか、従業員にとって心のよりどころになるようなものです。
会社への帰属意識を高め、価値基準となります。
説明しよう。
「帰属意識」とは、自分はこの組織の一員なんだ、という感覚のことである。
会社への帰属意識が高まることで、会社のために貢献したり、責任を持って行動したり、社員は会社全体を自分ごとのように考えて行動するようになるのだ。
また、社外に対しても、私たちの会社はこういう方向性でこんな未来をつくりたいんですよ~と伝えるということができます。
企業理念を策定することで得られるメリットは具体的に以下の点があげられます。
- 価値基準、行動基準が明確になる
- 従業員の一体感の醸成
- 企業のブランド力の向上
- 自社に適した人材の採用
- 業績、利益向上
理念を定めることで、判断が必要となった場合の価値基準が明確になります。
何か判断が必要な時や社員間で意見が分かれた場合、「私たちが一番大切にしていることはこれだよね、だからこの意見を採用しよう。」と、理念に立ち返ることで同じ方向を向くことができます。
理念を共有することで迅速に意思決定を行い、業務スピードが向上することになります。
さらに、先ほどお伝えした帰属意識を高めることができ、一体感や親近感が生まれます。
会社の規模が小さい方が、より自分ごととして会社への貢献感も高まるでしょう。
それから、これらの理念に基づいた従業員の行動はお客様からの信頼が増し、企業のイメージを向上させます。
また、理念に共感し、応援したいというファンを作ることができます。
理念を持つということは、ブランド力の向上にもつながるのです。
説明しよう。
ブランド力とは、会社に対する信頼感、安心感などの高さのことで、
「あの会社の〇〇がいい」と指名買いをされるようなことを言うのだ。
ブランド力が高い=会社のファンが多いということである。
例えば、同じような定食屋さんがあったとします。
一方は『私たちは定食の提供を通じて、地域住民のみなさんの憩いの場を提供し、住民同士が協力しあえるあたたかい街づくりに貢献します』というような理念を持っていたとしたら、その理念に共感し、このお店の方に行きたいと思ったりしますよね。
こんな風に、特別な商品やサービスを提供するということではなく、経営理念を定め、お客様にもそれを提示して、理念を意識した行動をすることで会社のファンを増やすことができるのです。
経営理念は、同じ思いを持つ人材の採用にもつながります。
理念に共感して入社した社員はそう簡単には辞めたりしませんので、会社に貢献できる優秀な人材に育っていきます。
そして、経営理念がしっかりと根付いている会社とそうでない会社では、売上や利益の結果にも違いが出ていることが様々な調査結果として報告されています。
このように、経営理念は会社経営にとって最も重要で、かかせないものです。
経営理念があることで、利益だけを個々に追求する会社ではなく、理念の基に一体となって会社を盛り上げていく社風がつくられていきます。
どうでしょう。経営理念が大切なのがお分かりいただけましたか?
経営理念すごい!
なぜ今まで意識せず放置してしまっていたんでしょう。。
大丈夫、これから一緒に考えていきましょう。
そして、額縁に入れて飾るだけでなく、しっかりと社員みんなが経営理念を意識して日々業務にあたることが大切ですよ。
経営理念を考えよう
経営理念で考えたい要素
経営理念は先ほどお伝えした、会社の持っている「価値観」「社会的な役割」「存在意義」のほか、「倫理観」「行動規範」「経営者の思い」「大切にしたい精神」「スローガン」など様々な要素が考えられます。
自社に合った要素を取り入れていくのが良いと思いますが、どう考えたらよいか分からない、という場合はこの3つを起点に考えてみましょう。
この3つを策定するにあたっていくつか質問を用意しましたので、これらについて考えてみてください。
ミッション、バリュー、ビジョンとそれぞれの定義はあまり深く考えず、重複してしまってもかまいません。
全てについて答えがでなくてもかまいません。
思いつくことを自由に書き出してみましょう。
ミッション(使命)
- なぜ今の会社を設立しようと思ったのでしょうか。なぜそのサービス、商品を提供しているのでしょうか。
- お客様のどんな悩み事を解決することでお客様を笑顔にできますか?
- 自社は社会からどんな役割を与えられていると思いますか?
ビジョン(将来像)
- 将来的にどんなお客様からどんな評価をもらいたいですか。
- 将来、地域ではどんな存在になっていたいですか。
- 会社経営を通じて実現したい良い未来とはどんなものですか?
- 自社の経営を通じてどんな社会、町づくりができますか?
バリュー(提供できる価値)
- 自社が他社と比べて得意としているサービスや特徴的な商品は何ですか?
- ”〇〇といえば「自社の社名」”とするなら、〇〇は何でしょうか。
- 自社の提供する商品やサービスはお客様の生活をどんな風にかえられますか?
これらに加えて、以下のことも考えてみましょう。
その他に大切にしたいこと
- お客様対応で重要視したいことは?
- 社員みんなが大切にしたい精神は?
- こういうことはやめよう
- 理想的な社員像は?
書き出してみて、そうだ、これがしたいんだ、としっくりくるものを探してみてください。
これらを記入しながら考えられるようExcelファイルを用意したのでよかったら使ってみてくださいね。
そして、この先10年、20年先も変わらないな、と思うもの、長く浸透させ、継承していきたいものを経営理念としてまとめましょう。
社員が分かりやすく覚えやすいもの、お客様、地域の人々や取引先にも伝わりやすく共感を得られる表現にしましょう。
経営理念策定プロジェクトがおすすめ
いろいろ考えてみたのですが、、うまくまとまらなくて。。
そうはいっても、経営理念を考えるのは大変で、び~社長のようにまとまらなくて困ってしまう方もいますよね。
そこでおすすめしたいのが、経営理念を策定することを社員全員でプロジェクトにすることです。
社長が主導でもかまいませんが、それを社員に任せてみるものひとつの方法です。
内容を考えるのを任せるというのではなく、どうやって社長の思いも反映した、みんなが納得する経営理念を作るかという方法を任せるということです。
例えば、みんなに投票してもらったり、社内の会議で少しずつ時間をとって一定の期間をかけて話し合ったりするのも良いと思います。
プロジェクトにすると良いことはいくつもあります。
- 社員が自分ごととして考えられること。理念を浸透させる、という一番の難題も解決できる。
- 社長の思いをあらためて聞き、理解を深められる。
- 日ごろ社員がどんな思いを大切に仕事をしているかを知ることができる。
- プロジェクトを通じてコミュニケーションを図れる。
自分たちが関わって作った理念は大切にしていきたいと思いますし、社長がどんな思いでどんな考えなのかをあらためて聞くことで深く理念を理解することができます。
忙しい業務の合間を縫ってのプロジェクトなので難しい部分もあるかもしれませんが、ぜひコミュニケーションの一貫として楽しんでトライしてみてください。
じっくり考えて決めたものこそ自社にとってかけがえのない経営理念になります。
少しずつでも良いので、時間をとって考えてみてくださいね。
経営理念を浸透させるには・・・
経営理念が策定できたら、作りっぱなしでは意味がありません。
社員が理念を意識して行動できるように工夫していきましょう。
どうやって浸透させていけば良いか社内で話し合ってみるのも良いと思いますが、参考までにいくつか例をあげておきます。
- 王道ですが、紙に書いて社内に貼る。トイレなどみんなが使う場所。
- 朝礼や夕礼などで唱和する
- ことあるごとに社長が理念を口にする
- お客様にお渡しする冊子やチラシに掲載する
- 会議の時は理念を念頭に確認してスタートする
- 昇給や昇格の時に理解度をチェックする
まとめ
では今日のまとめをするぞ
経営理念とは、経営理念の考え方
- 企業経営において、経営理念は最も上位に位置している。
- 経営理念に基づき経営目標、戦略を立てていくことになるためしっかりと策定する必要がある。
- 経営理念は、ミッション、ビジョン、バリューをベースにすると考えやすい。
- 経営理念は社員みんなで考えてみるという手もある
- 経営理念を策定したら、浸透させる工夫をしよう
経営理念策定のメリット
- 価値基準、行動基準が明確になる
- 従業員の一体感の醸成
- 企業のブランド力の向上
- 自社に適した人材の採用
- 業績、利益向上
いかがでしたでしょうか。経営理念がどんな意味をもち、どんな風に策定していけば良いか理解いただけましたか。
これまでの『ハーブYでウハウハ美ボディーを作る』という理念はやめて、新しい経営理念を社員みんなで作ってみようと思います。
ちょっと楽しみになってきました。
え、そんな経営理念だったんですね。。。
そうですね、ぜひ楽しんでやってみてくださいね!
経営理念ができたら、次は経営戦略について考えてみましょう。続きはこちらへ。